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      坂下賞
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坂下賞の趣意

学会の創設者、故坂下昇先生の本学会に対するご功績を称え、坂下賞を創設することが、2004年度の学会総会で決議されました。それに基づき、会長経験者を筆頭とする選考委員会を発足させ、坂下賞授賞の選考が進められております。


2004年度坂下賞 (Sakashita Prize)
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受賞者;森 知也
京都大学経済研究所助教授

受賞理由:
森知也氏はペンシルバニア大学地域科学部博士課程での学生時代および日本への帰国後を通じて、いわゆるNew Economic Geography (NEG)のフロンティア開拓において、共同研究および独自の研究を行うことにより、世界的に認められる研究成果を継続的にあげてきた。これらの研究成果の一部は、すでに7編の論文として世界的に評価の高いレフリー付英文ジャーナルに、また、3編の招待論文として英文学術専門書に掲載されている。さらに、それらの論文は世界中のNEGの研究者によって頻繁に引用されてきている。特に、都市システムの形成と発展に関する2編の論文は、経済学の各分野における過去半世紀の代表的な論文を集めた、The International Library of Critical Writings in Economic Series (Edward Elgar Publishing, 2005)におけるSpatial Economics の巻に含まれることが決定している。それらすでに発表された論文の多くは理論研究であるが、最近では森氏はNEGや空間経済についての実証研究も平行して進めてきており、研究成果の一部はすでに2編のDiscussion Paperとして発表されている。以上のように、森知也氏は応用地域学会が世界に誇りうる業績をあげてきた若手の研究者であり、将来における更なる活躍が期待できる。よって、森知也氏が坂下賞の受賞者として相応しいと判断された。

坂下賞表彰式は、応用地域学会総会終了後に行われ、森知也氏には、井原会長から、表彰状(盾)と金一封が授与されました。

2004年度 坂下賞選考委員会
   委員長 佐々木公明(東北大学)
   委 員 藤田昌久 (京都大学)
   委 員 金本良嗣 (東京大学)
   委 員 井原健雄 (ARSC会長・北九州市立大学)
   委 員 柏谷増男 (ARSC副会長・愛媛大学)


2005年度坂下賞 (Sakashita Prize)
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受賞者;曽 道智(Zeng, Dao-Zhi)
香川大学大学院地域マネージメント研究科助教授

受賞理由:
曽氏はこれまで、J.of Economic Geography, J.of Development Economics, RSUE, JRS ,IEEE Transactions などの国際ジャーナルに16編の論文を発表(予定を含む)している。国際ジャーナルに現在投稿中の論文も数編ある。また、国内外の学会での口頭発表も頻繁で、活発な研究活動を展開している。曽氏の研究テ−マは大別して、2つある。一つは空間経済学に関連するもので、解析可能なモデルの開発を行い、特に工業部門の立地分布に関して農業部門の役割を明らかにした。この成果をさらに発展させ、「産業再分散」が生ずる条件を明らかにしている。本研究の成果に対して2004年のSpringer-Verlag賞が授与された。この一連の研究の中で、動学モデルの均衡安定性条件を分析したことも大きな貢献である。曽氏のもう一つの研究テーマは地域間コンフリクト分析である。ゲーム理論の手法を用いて新しい仲裁法の開発に成功し、Law and Economicsの専門家の注目も集めている。さらに、理論的分析に加え、新たに実験経済学の手法を導入し、これまでの理論成果を実用化する道も探っている。仲裁メカニズムの実用化を目指した研究は実践的地域科学の重要な分野である。総じて、曽氏はその高い数学的分析能力を生かした、学際的研究者として高く評価される。以上のように、曽道智氏は応用地域学会が世界に誇りうる業績を上げてきた若手の研究者であり、将来における更なる活躍が期待できる。よって、2005年度坂下賞の受賞者として相応しいと判断された。

坂下賞表彰式は、応用地域学会総会終了後に行われ、曽道智氏には、柏谷会長から、表彰状(盾)と金一封が授与されました。

2005年度  坂下賞選考委員会
   委員長 藤田 昌久 (京都大学)
   委 員 金本 良嗣 (東京大学)
   委 員 佐々木公明 (東北大学)
   委 員 柏谷 増男 (愛媛大学 ARSC会長)
   委 員 小林 潔司 (京都大学 ARSC副会長)


2006年度坂下賞 (Sakashita Prize)
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受賞者: 城所 幸弘
政策研究大学院大学助教授

受賞理由:
 城所幸弘氏は、都市経済、都市交通、費用便益分析、規制の経済学といった広範な分野において、政策的な重要性が大きい研究に取り組んできている。これらの研究成果の多くは、国際一流ジャーナルに掲載されており、質の高い業績である。
 城所氏の主要な研究テーマは、都市鉄道等の規制政策と交通投資の費用便益分析の2つである。前者に関する第一の研究では、現実の都市鉄道運賃規制が簿価ベースの校正報酬率規制であったことに着目して、このことが不十分な鉄道投資をもたらして、大都市における極端な混雑現象の一因になったことを理論的に解明した(Regional Science and Urban Economics 1998)。規制政策に関する研究の第二の流れは、様々な規制方式がサービス品質に与える影響を分析した一連の研究である(Journal of the Japanese and International Economies 2002, Journal of Transport Economics and Policy, 2003, Transportation Research Part A 2006)。これらの研究では、規制政策の理論的分析にとどまらず、シミュレーションを用いた定量的分析にも及んでいる。交通投資の費用便益分析に関しては、通常の消費者余剰分析、完全代替を仮定するWardropタイプモデル、ロジットモデルの3つの間の関係を分析し、実務で用いられている費用便益分析手法の改善に貢献した研究(Transportation Research Part B 2006)と、交通ネットワークを明示的に導入したモデルを用いて、価格体系の歪みが存在する場合の便益計測手法を導出した研究(Journal of Transport Economics and Policy 2004)の2つが代表的なものである。これらの研究は、学問的貢献が高く評価されるのみならず、費用便益分析の実務に大きく貢献することが期待できる。
 以上のように、城所幸弘氏は、政策的含意の大きい研究を幅広く進めており、世界的に高く評価されている。また、国際誌に掲載された論文はすべて単著であり、業績の掲載誌も、Regional Science and Urban Economics, Journal of Transport Economics and Policy, Transportation Research, Information Economics and Policy, Journal of the Japanese and International Economiesと、多岐にわたっており、多様な研究者に評価されている。これらのことから、2006年度坂下賞の受賞者としてふさわしいと判断される。

坂下賞表彰式は、応用地域学会総会終了後に行われ、城所幸弘氏には、柏谷会長から、表彰状(盾)と金一封が授与されました。

2006年度  坂下賞選考委員会
  委員長 金本 良嗣  (東京大学)
  委 員 佐々木公明  (東北大学)
  委 員 岡部 篤行  (東京大学)
    委 員 柏谷 増男  (愛媛大学 ARSC会長)
  委 員 小林 潔司  (京都大学 ARSC副会長)



2007年度坂下賞 (Sakashita Prize)
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受賞者;佐藤泰裕(さとう やすひろ) 
名古屋大学環境学研究科准教授

受賞理由:
佐藤氏の貢献は理論的独創性とその緻密な論理性にある。氏の研究テーマは労働経済学から派生しているが、job-search, mismatch, training cost を介して都市の設定の中で空間構造と労働市場のパフォーマンス間の相互依存関係を解明することによって、都市経済学あるいは地域経済学の新しい分野を開拓することに貢献している。2001年のJUE論文では、都市に人口が集中することは必ずしも集積の利益を引き起こさない。その一つの理由は労働市場におけるmismatch に起因し、実質的な賃金(生産性)は必ずしも上昇しないことである。集積の利益が働くためにはjob search skillが収穫逓増の場合であることを示した。また2004年JUE論文では都市における労働市場と土地市場の一般均衡モデルで都市交通システムの改善がjob matchを増加させ、失業を軽減することを示した。また2000年のEL論文ではHarris-Todaroモデルの示唆とは逆に生産性(賃金率)が高い地域ほど失業率が低いことを示した。また、2006年Economics Bulletin 論文や2007年JUE論文では地域間人口移動について、賃金、失業率などの労働市場の変数に加え、出生率や死亡率などの人口学的要因も考慮して、現実的モデルを構築し、人口移動がスキル形成に与える影響を明らかにしている。
 さらに、スキルミスマッチや賃金の硬直性といった労働市場の不完全性が存在する時に、地方政府の課税や公共財供給が地域経済にどのような効果を持つか、それらの意思決定が効率的か、という地方財政の課題について研究を広げ、地域・都市政策立案にも有効な成果を挙げつつある。理論と同時に政策的分析をも重要視する応用地域科学分野で、将来性が非常に豊かな研究者である。 

坂下賞表彰式は、12月8日の応用地域学会総会終了後に行われ、佐藤泰裕氏には、小林潔司会長から、表彰状(盾)と金一封が授与され、次年度の研究発表大会において特別講演をしてもらうことなどの報告がありました。

2007年度   坂下賞選考委員会
   委員長  佐々木 公明(東北大学)
   委 員  岡部 篤行(東京大学)
   委 員  藤田 昌久(京都大学)
   委 員  小林 潔司(ARSC 会長)
   委 員  田渕 隆俊(ARSC 副会長)


2008年度坂下賞 (Sakashita Prize)
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受賞者;村田安寧(むらたやすさだ) 
日本大学大学院総合科学研究科准教授

受賞理由:
村田氏の主要な貢献は、空間経済学(new economic geography)、地域科学、開発経済学にお
いて理論を構築し発展させ、新分野を開拓したことである。
JUEに掲載された三編の論文は、空間経済学における分散力に関する一連の研究である。空間
経済学のモデルには、企業間の連関による集積力がある一方で、分散させる力がある。2003年
の論文では、消費者の地域選好の異質'性が分散力として働くこと、2004年の論文では、通勤費
用や地代が分散力として働くことを理論的に示した。また、2007年の論文では、2003年の論文
をマーケティングの観点から分析を行った。
2008年のJET論文では、空間経済学のモデルを一般化した。KrugmanのJPE論文のモデルにな
い競争促進効果と、Ottaviano-Tabuchi-ThisseのIER論文のモデルにない所得効果の両方を持
ち合わせた理論モデルを開発した。
JDEに掲載された二編の論文では、地域間の移動とともに農業工業間の移動を扱い、農業生産
と工業生産が相互依存的であることに着目したモデルを提示し、エンゲル法則、ペテイの法則、
および都市集積を内生的に導いた。

このほかにも、いくつかの興味深い研究を行っており、その成果をワーキングペーパーにまと
めている。一例を挙げれば、都市財政におけるヘンリー・ジョージ定理が成り立つために効用関
数が満たすべき性質に関する研究、企業の生産性が異質な場合に生じる市場均衡の分析などであ
る。
いずれの研究論文も、厳密な理論に立脚し、織密な論理を積み重ねて書かれており、かつ高度
な分析をしつつ、豊かな内容になっていて、高く評価できる。また、都市。地域の経済成長、地
域間の所得格差、社会厚生などの社会的課題にも言及しており,理論と同時に都市。地域政策的
分析をも重視する応用地域科学の分野において、将来が非常に期待出来る本格的な研究者である。
よって村田氏を坂下賞候補として推薦をする次第である。

坂下賞表彰式は、応用地域学会総会終了後に行われ、村田安寧氏には、小林潔司会長から、
表彰状(盾)と金一封が授与されました。

2008年度坂下賞選考委員会
委員長岡部篤行(東京大学)
委員藤田昌久(甲南大学)
委員金本良嗣(東京大学)
委員小林潔司(ARSC会長)
委員田渕隆俊(ARSC副会長)


2009 年度坂下賞 (Sakashita Prize)
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受賞者: 松島 格也
京都大学大学院工学研究科准教授

授賞理由:
松島格也氏の主たる貢献は,土木計画学,交通経済学の各分野において,従来,十分な注意が向けられていなかった市場の不完全性(マッチング・市場厚・戦略的補完性等の外部性,不確実性)に着目した理論を構築するとともに,地域・交通政策の立案にあたって有用な政策的含意を数多く導き出している点にある.交通市場のメカニズムを理論的に解析し,そこに内在する外部性の存在とその克服方法について分析している.1999 年,2001 年,2003 年の一連の論文(土木学会論文集,土木計画学研究論文集)では,タクシー市場を例に取り上げて,同質な主体による期待形成メカニズムを通じて市場が内生的に形成されるメカニズムを明らかにしている.不完全な憶測と取引費用の存在が原因となって生じる市場厚の外部性の存在を指摘するとともに,市場差別化政策や運賃規制政策の効果を定性的に示している.
また,2006 年,2008 年,2009 年の一連の論文では,容量に制約のある交通サービス市場を対象として,不確実性を持つ交通サービスの予約行動と料金設定に関する分析を行っている.2006 年の論文では,料金支払いタイミングの違いによる家計と企業の間のリスク分担構造を理論的に説明し,事後割引料金の優位性を証明している.2008 年の論文では,予約システムが有する私的情報の顕示メカニズムを指摘するとともに予約システムの持つ各種便益を定性的に評価している.さらに2009 年の論文では通時的差別化料金システムが持つ効率的割り当て便益の存在を指摘するとともに,社会的余剰にもたらす影響を評価し,料金規制の必要性について理論的に証明している.これらの論文はいずれも,将来に対するコミットメントと意思決定の自由度を定性的に評価するものである.この他にも,いくつかのユニークな研究を手掛けており,例えば,利他的支払い意思を考慮したバリアフリー施設の経済便益評価とその調査法に関する研究で土木学会論文奨励賞(2002 年度)を受賞している.
いずれの研究論文も,市場の不完全性にともない発生する様々な外部性が存在する状況のもとで,料金政策や公共財投入といった各種公共政策が地域経済にどのような影響をもたらすかを分析し,現実の地域・交通政策に有益な示唆を与えている.理論研究のみならず政策的分析を重要視する応用地域科学の分野において,重要な貢献を果たしている.以上より,2009 年度坂下賞の受賞者として,松島格也氏が相応しいと判断された.

坂下賞の表彰は、応用地域学会総会の中で行われ、松島格也氏には、田渕隆俊会長から、表彰状(盾)と金一封が授与されました。

2009 年度坂下賞選考委員会
  委員長 藤田 昌久 (甲南大学)
  委 員 金本 良嗣 (東京大学)
  委 員 赤松 隆 (東北大学)
  委 員 田渕 隆俊 (ARSC 会長)
  委 員 黒田 達朗 (ARSC 副会長)


2010 年度坂下賞 (Sakashita Prize)
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受賞者: 小川 光
名古屋大学大学院経済学研究科 教授

授賞理由:
小川光氏は公共経済学、地方財政、都市経済学等の分野で幅広い研究活動を展開しているが、最大の貢献は、地域間のスピルオーバーに焦点を当てた地域政府間の財政競争に関する一連の研究である。その?要なものは以下の3つの論文である。 2006 年のAnnals of Regional Science(単著)は、地方公共財の便益が地域外にスピルオーバーする可能性と、地域間競争における財政上の外部性の双方を考慮し、資本税競争モデルにおいてスピルオーバー効果が存在する場合には、財政上の外部性を原因にした資源配分の歪みがむしろ小さくなることを明らかにした。モデルの中で取り上げられている2つの要素がいずれも公共財の過?供給の原因になるものであるにも関わらず、両者が同時に存在することによって、過?供給の度合いが逆に小さくなるという興味深い結論を得ている。
2007年のFinanz Archivの論文(単著)は、Depater and Myers (1994, JUE)を拡張したものである。Depater and Myersは、「初期の資本保有量に差がある2つの非同質的な国が資本税競争を行う場合には、資本輸入国がプラスの資本税率を設定し、資本輸出国はマイナスの資本税率を設定する」ことを示した。しかし、現実にはその逆のケースも観察される。この論文では公共財の国際的なスピルオーバー現象を導入することにより、スピルオーバー効果の大きさに?じて、Depater and Myers が扱った資本輸入国が正、資本輸出国が負の税率を選択する場合に加え、両国ともに正の税率を設定する場合、両国ともにマイナスの税率を設定する場合が均衡となりうることを示した。
2009 年のAmerican Economic Review の論文はDavid Wildasin との共著であるが、地方公共財のスピルオーバー現象を対象として、「外部性が存在すると経済の資源配分は歪んだものになる」という常識的な見解が必ずしも成立しない場合があることを示した。具体的には、資本の国際的移動が自由な状況での財政競争モデルにおいては、例えば公害等の「外部性の生産関数」が各国で異なることが資源配分を歪ませる基本的原因であって、外部性の存在自体が資源配分を歪ませる原因にはならないことなどを明らかにしたものである。
これらの研究成果からわかるように、小川光氏は地域科学ないし都市・地域経済学の中でも、最も伝統的かつ中心的なテーマの一つである地方公共財の供給問題等をテーマとしつつ、古典的な定理の再検討を中心に精力的な研究を続けており、数多くの優れた業績をあげている。以上より、2010年度坂下賞の受賞者として、小川光氏が相?しいと判断された。

2010 年度坂下賞選考委員会
  委員長 金本 良嗣 (東京大学)
  委 員 赤松 隆 (東北大学)
  委 員 佐々木公明(尚絅学院大学)
  委 員 田渕 隆俊 (ARSC 会長)
  委 員 黒田 達朗 (ARSC 副会長)


2011 年度坂下賞 (Sakashita Prize)
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受賞者: 山本 和博
大阪大学経済学研究科 准教授

授賞理由:
 新経済地理学のフレームワークを用いた,産業集積,人口分布に関する緻密な理論分析を行い,評価の高い国際誌にこれまで7編の論文を刊行し,2編の刊行予定の論文を完成させている.このことは都市地域科学の分野で,間違いなく将来を嘱望できる研究者であることを示している.特に,2005年のRegional Science and Urban Economicsに掲載された論文において,経済地理学を一般化し,収穫一定技術と収穫逓増技術を企業が選択できる興味深いモデルを提示し,各国における産業化の過程の違いや産業集積の違いを理論的に説明することに成功している.また,Journal of Population Economicsに(刊行予定も含めて)2編の論文を掲載するなど,日本において少子高齢化対策が重要な課題にある時期に,人口動態をも分析対象とするなど研究領域を開拓する精神にも満ちている.
 さらに,山本氏は比較的若い時期から教育熱心で,既に都市地域科学で自立している優れた研究者を育て上げていることは賞賛に値し,応用地域学会の発展のための貢献が大きい.以上の理由によって,2011年度坂下賞は山本和博氏に授与することが適切であるとの結論に至った.

2011 年度坂下賞選考委員会
  委員長 佐々木 公明 (尚絅学院大学)
  委 員 赤松 隆 (東北大学)
  委 員 瀬古 美喜(慶応義塾大学)
  委 員 黒田 達朗 (ARSC 会長)
  委 員 中村 良平 (ARSC 副会長)


2012 年度坂下賞 (Sakashita Prize)
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受賞者: 塚井 誠人
広島大学工学研究院 准教授

授賞理由:
 塚井誠人氏の主たる貢献は,地域科学,交通モデリング,空間計量経済学の分野において50編以上の査読論文を執筆し,多くの実証的研究を実施するとともに,定量的な評価結果から地域政策の立案に有用な政策的含意を数多く導き出している点にある.なかでも、2002年,2007年のいずれも「土木学会論文集」に掲載された論文では,時空間計量経済モデルを用いて社会資本の生産力効果を分析している.このうち,2002年の論文では,生産活動による知識ストックが空間的にスピルオーバーする効果を考慮した地域生産関数を用いて社会資本の生産力効果を明らかにしている。塚井氏は本研究によって,土木学会論文奨励賞を受賞している.さらに,2007年の論文では,社会資本の整備効果が長期間にわたって発現することに着目し、長期的タイムラグ分布構造を考慮した地域生産関数モデルを推計することより,社会資本整備効果の時間的な波及効果と空間的な波及効果を定量的に把握することに成功している.社会資本の生産性分析は地域科学分野においても重要なテーマのひとつであり,特に近隣地域へのスピルオーバー効果は,最適資本配分の観点からみても有益な研究成果が求められている研究課題である.さらに,社会資本の効果が発現するラグ構造を分析していることは,将来の地域政策の立案に資する「公共投資関数」の導出に対して有益な知見を与えると考えられる.
 以上,塚井氏はいずれの研究論文においても,特に都市・地域科学で重要な研究対象テーマである社会資本の生産性に関して,最近の空間計量経済学の手法を用いて緻密で厳密な実証分析を行い,多くの有益な成果を得ている.理論研究のみならず実証分析を重要視する応用地域科学の分野において,重要な貢献を果たしている.また本学会においても運営委員や年次大会プログラム編成委員を務めており,学会の運営に大きく貢献している.よって,ここに2012年度坂下賞を授与する.

2012 年度坂下賞選考委員会
  委員長 佐々木 公明 (尚絅学院大学)
  委 員 瀬古 美喜(慶応義塾大学)
  委 員 小林 潔司 (京都大学)
  委 員 黒田 達朗 (ARSC 会長)
  委 員 中村 良平 (ARSC 副会長)


2013 年度坂下賞 (Sakashita Prize)
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受賞者: 隅田 和人
東洋大学経済学部 准教授

授賞理由:
 隅田和人氏の主たる貢献は、応用計量経済学、不動産経済学、住宅経済学の分野において10編以上の国際誌および国内誌に掲載された査読論文を執筆し、多くの実証的な研究を実施するとともに、そこから数多くの住宅政策的含意を導出している点にある。なかでも、2003年の『応用地域学研究』に掲載された論文では、持家住宅取得者の住宅ローン残高に応じた所得税控除税制が、東京都区部の中古マンションの品質調整済み住宅価格指数に及ぼす影響を分析し、住宅ローン減税による実効補助率の増加は、住宅価格を上昇させるほど十分な影響を及ぼしているとは言えないが、実効補助率の住宅価格への影響は、控除制度の拡充とともに増大したということを示した。日本における住宅ローン減税の住宅価格への影響を、時系列データを用いて分析した既存研究は存在せず、政策的にも意味のある研究となっている。さらに、2007年の論文では、パネルデータを用いて、日本の住宅市場に特有な2つの政策、つまり2004年に導入された持ち家の譲渡損失繰越控除制度ならびに借地借家法が転居に与える影響を、ハザード・モデルにより分析した。住宅資産制約に注目して、持家からの転居を分析した先行研究は、海外には若干存在するが、住宅資産制約を緩和する政策(ここでは譲渡損失繰越控除制度)の転居への影響を分析した既存研究はなく、本研究が最初のものである。また、日本の借地借家法による継続家賃は、暗黙の家賃補助であるが、このような形での家賃統制が転居に及ぼす影響を分析した研究は、本研究が初めてである。
 以上、隅田氏はいずれの論文においても、特に都市・地域経済学で重要なテーマである住宅価格変動に対する住宅政策の影響を、時系列データと個票データを利用して厳密な計量経済学的手法により分析し、多くの有益な成果を得ている。また本学会にもほぼ毎年発表者や討論者として積極的に参加しており、学会活動に大きく貢献している。よってここに2013年度坂下賞を授与する。

2013 年度坂下賞選考委員会
  委員長 瀬古 美喜 (武蔵野大学)
  委 員 小林 潔司 (京都大学)
  委 員 浜口 伸明 (神戸大学)
  委 員 中村 良平 (ARSC 会長)
  委 員 文 世一 (ARSC副会長)